㈱ビーアンドピーは、インクジェットプリンタを使用しさまざまな広告物やディスプレイを製作する会社。クライアントのオーダーに応えるため毎日さまざまな大判プリントや造形物を出荷している。
同社では2018年3月にミマキエンジニアリングの3Dプリンタ「3DUJ-553」を導入。6月からはテスト受注を開始しており、顧客からの要望を立体造形している。
導入された3Dプリンタ「3DUJ-553」
「3Dプリントは、当社の従来顧客とはまったく別のお客様に出会える良いきっかけとなると思いました」と導入を推進した中村祐輔事業開発本部長はいう。
また、3Dプリンタの導入は、次に導入したい機材として社員からの要望も多かったという。
和田山朋弥社長は「3Dプリンタ『3DUJ-553』に関しては、私どものお客様に対して従来の提案に加えて、更にもう一歩踏み込んだアプローチができるのではないか。また、新たなお客様の開拓の一手になるのではないかと思い決めました。」と振り返る。
中村祐輔事業開発本部長
数多くある3Dプリンタの中から、同社が「3DUJ-553」に決定した最大の要因は、その高品質と口をそろえる。
中村本部長は、まず1,000万色を超えるフルカラーの性能を「圧倒的」と評価する。
「色が付けられない3Dプリンタでは、当社に色付けの人員と設備がないので導入しても意味がなく。カラーを付けられる石膏タイプの3Dプリンタでも、後から色付けや磨きが必要なことから、事業の目的からすると導入は厳しいと判断しました」と語る。
造形物の強度の高さも「圧倒的」という。
石膏タイプのプリンタで製造した場合、造形物が柔らかく、取り出しに神経を使う。「3DUJ-553」はUV硬化タイプであるため、完成した時から非常に強度が高く、取り出し時に破損してしまう心配がない。
1000万色のフルカラーは「圧倒的」
また、造形を補助する目的で3Dプリンタに使われる「サポート材」は、造形物に付着した形で製作される。このため造形後は除去が必要だが、石膏の場合はこれを掘り出すように取り出すため、専門の人員を置かなければならず、その際に造形物を傷つけてしまうことがあるという。
「3DUJ-553」では、サポート材が水溶性であるため、専用の液剤につけておくだけで、除去が終了する。
これらのことから、「3DUJ-553」は取り扱いが容易で、着色の仕上げや、コーティング、磨きなど、後加工の人員が必要ないといったメリットが見えてくる。
サポート材は水溶性。途中で取り出したもの(左)と完全に除去したもの(右)
選択の根拠は、これらの性能だけではない。
ビーアンドピーは、ミマキエンジニアリングの大判プリンタを多数導入しており「その信頼感もありました」と和田山社長。
サポート面でも「ミマキさんなら、数日も待たすことなくサービスの方が来てくれて、トラブルを解決してくれます」と中村本部長からの信頼も厚い。
実際のトラブルの頻度を聞いたところ「月に1回あるかないか」で、それほど保守サービスは活用してないという。
和田山朋弥社長
3月末に導入した「3DUJ-553」。ビーアンドピーでは、立体造形などのソフトついて学んだ専任担当を同機に配置し、テストプリントを繰り返してきた。
「担当者が知識を急速に付けており、さまざまなテスト品を作り上げています。もともと担当者が3Dプリントに興味があったので、比較的早く知識を身に着けてくれました」と和田山社長。
3DCADなど専門ソフトの扱いは一見難しく見えるが、Illustratorの知識があれば、短時間での習得が可能で、今でも担当者は使用しながら、そのノウハウを蓄積し続けている。
6月から、同社では各営業担当が3Dプリンタのサンプルを持ち、PRを進め、テスト受注を開始。顧客からの要望を形にし始めた。
当初、同社が得意とする大判のポスターやサイン、販促用のPOPなどのクライアントに「3DUJ-553」の導入を紹介していったが、思った以上の反響を得た。
さらに記念品やアメニティ、オリジナルグッズなどの製作会社から、受注やサンプル依頼が来ており、冒頭の「3Dプリントは、当社の従来顧客とはまったく別のお客様に出会える良いきっかけとなると思いました」という中村本部長の言葉となった。
一方で、顧客の3Dプリンタに対しての認知は、今はそれほど高くなく「徐々に認知を広めているのが現状」で、3Dプリンタという言葉は知っていても、それが「どこに置いてあり」「いくらで」「何をつくれるのか」は、あまり知られていないという。
逆に顧客の中でも比較的大きな企業では、3Dプリンタを数年前に導入したものの「使いこなせなかった」というケースもあり、「専門業者に造形してもらうのが良い」との判断を下す会社もある。
本物の仏像にそっくりなレプリカも作った。本物は右
7月現在、本格的な稼働はこれからだが、利用したクライアントからの反響はおおむね好評だ。
これまで石膏タイプの3Dプリンタを利用していた顧客からは、1,000万色のカラー表現に「思った以上に、微妙な色の違いが出せる」との声。「塗装のことまで考えなくてよくなった」という声もあった。
また、納期に関しても「これまで2週間だったものが3日でできるのはありがたい」と短納期に対応した点も評価を受けている。
もちろん「金型を作らなくて良いので、少しずつ異なるバージョンを出せる」といったメリットもある。
射出成型などでは、金型を起こす場合、製造単位はほとんどが1万個以上から、そうでなくては数十万円~数百万円の金型代を吸収できないためで、製造数が少ないものは形を簡単にしてしまうか、あきらめていたというのがこれまでの立体造形の実情だ。
3Dプリンタ「3DUJ-553」の登場により、100個、200個などの少ない個数でも、安価にフルカラーでの造形が可能になった。
「3DUJ-553」への要望を聞いてみたところ、中村本部長は「クリアインクはいい機能ですが、もっと透明度があれば、アクリル什器のようなもので用途が増えます」と答える。
また、和田山社長は「もっと強度が欲しいですね。部品の一部として使う場合に破損するケースがあり、また温度が高い部屋では曲がってしまうという話も聞きました」と改善に関する希望を述べる。
さらに、色に関して、中村本部長は「ジャパンカラーに合わせるなど、カラーマッチングのシステムが欲しい」そうで、色合わせの精度を上げれば、使い勝手がよく、さらに高品位なプリントを目指せるとの話をしてくれた。
和田山社長は「中村本部長の所属する事業開発本部は、単純に売り上げを上げるだけでなく、新たな事業と顧客を創造する部門です。『3DUJ-553』はその推進力となる製品だと思っています」とさらなる活用に期待を込める。
カラーマッチングが必要と訴える中村本部長
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株式会社グラフィッククリエーション
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株式会社ミマキエンジニアリング
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※1:2017年8月現在 当社調べ