㈱奥村設計事務所は、2002年創業。公共インフラ事業において、デザインとプランニングを手掛ける建設コンサルタント。2005年からいちはやく3D CADに取り組み、続けて3Dレーザースキャナーなどの導入も図り、3次元データ活用の業務基盤を構築。2018年7月にはミマキエンジニアリングの3Dプリンタ「3DUJ-553」 を導入し、3次元測量から設計、施工計画、BIM/CIM、模型作成まで、一貫して3次元データを活用し先進的な取り組みを実現している。
【左】奥村真次 代表取締役社長【右】CIM推進チーム 森田様
同社の強みは、測量から構造設計、施工計画までの工程を一貫して行えることだ。
早い段階から導入したICTに基づき、3次元化への取り組みを続けてきた。最新の3Dレーザースキャナーとドローンやリモコンボードを組み合わせて測量した3次元データにより、精度の高い地形モデルの作成が可能だ。
「3次元の見える化」を行うことで工事発注後の設計変更や問題点を迅速に検証でき、フロントローディングにおいて高い評価を得ている。この「3次元の見える化」をさらに強化すべく、2018年7月にミマキエンジニアリングの3Dプリンタ「3DUJ-553」を導入した。
「3Dプリンタは会社に大きく貢献してくれると確信する」と語る奥村代表
奥村設計事務所が2002年の創業以来、一貫して大切にしてきたことがある。それは、真心を込めてお客さまと向き合い、期待以上の価値を提供することだ。クライアントに対して施工手順を説明しやすいように、2次元の施工ステップ図を提供。その分かりやすさが評判となり、3次元モデルの需要に注目した。
「3次元モデルで設計や施工計画を作れば視覚的に共有できるので、3次元モデルをモニター上で回転することで説明が可能になります」と奥村設計事務所の奥村真次代表取締役はそのメリットを語る。
そんな奥村代表が次の高付加価値施策として目をつけたのが、3Dプリンタだった。
「3DCADなどで作成しても、やはり実際の立体、模型にはかなわないなという気持ちはありました。たとえばダムなどの施工イメージは、やはりモニターで見るより立体の模型の方がスケール感が伝わりやすい。せっかく精度の高い3次元データを持っているので、これを3Dプリンタで打ち出すことができないかと考えました」
そこで、各3Dプリンタメーカーにヒアリング調査を開始したことがフルカラー3Dプリンタを導入するはじまりだった。
同社で制作した立体模型
「最初に検討したプリンタは、海外メーカーの粉末焼結積層タイプで素材は石膏。取り寄せたサンプルのサポート材を除去するために、小さな刷毛(ハケ)で掃いてみたら細かな部品が折れてしまったのです。石膏では繊細な表現がどうしても難しく、それに素材自体の色がくすんでいてツヤがないため、満足できるレベルではありませんでした」と奥村代表。そして、いくつかプリンタを試す中で出会ったのが、ミマキエンジニアリングの3Dプリンタ「3DUJ-553」だ。
海外メーカーの製品だとトラブルが起きた際にメンテナンスが困難となることから、日本製であることが決め手の一つだった。またミマキの営業担当はプリンタの良い部分だけを説明するのではなく、癖も教えてくれた点にも大変好感がもてたという。導入するタイミングも新社屋の設計をしていた時期だったために、3Dプリンタの設置や搬入経路の計画が立てやすかったこともポイントだった。
手前の大きな橋の模型は造形時間120時間ほど
3Dレーザースキャナー、ドローン、ラジコンボートなどを駆使して、陸海空から地形や構造物の3次元点群データを計測し、精度の高い3次元データを作成している同社だが、いかに完璧なデータでもそのまま3Dプリンタで出力できるわけではない。出力には3Dプリンタ専用ソフトでのデータ変換が不可欠だが、その際に発生するエラーの修正や、イメージに近づけるための色の調整などが必要になる。この作業だけで1案件につき、1週間以上かかることもあるという。
クリアインクを活用して、構造物内部の鉄筋を可視化
「データ修正ソフトで作業がしにくい場合は、元の3次元データ自体を作り直すこともあります。複雑な形状は再現しにくいし、コンピューターの処理時間もかかってしまうので、できるだけ単純な形状と方法で作成していきます。この点は3次元データを一貫して扱える当社ならではの強みです」と設計部計画グループCIM推進チーム森田さんは語る。
「データ修正ソフトは1ライセンスが非常に高価ですが、1つのみだと1人に余計なプレッシャーがかかってしまいますし、ノウハウが属人化してしまう。そこで2ライセンス購入し、社内にノウハウを蓄積できるようにと考えました」と奥村代表。
ITを導入する際は複数台同時に導入することで、ナレッジ共有しやすくする。長年培ってきた奥村設計事務所のITポリシーだ。
橋梁の高欄(柵)や、上部工内部の点検用通路までも、忠実に再現されている
「橋梁の高欄(柵)や、上部工内部にある点検用の狭い通路も忠実に再現しています」と作成したばかりの模型を奥村代表が見せてくれた。
「修正ソフト上で見ている色と、実際に出力した造形物の色は異なっているので、それを考慮した手作業での調整が必要です。また、大容量の3次元データに、3Dプリンタの処理能力が追い付いておらず、出力するにはモデルを単純化するなどデータ自体を修正する必要があります。でも本当は3次元データをそのまま使えるのがベストなので、今後の技術発展に期待しています」と森田さん。
「データと造形物の色の差を無くしていきたい」と話す森田さん
また、試作した道路模型をお客様に渡したところ大変気に入られ、見積もりの提示を求められたという。手作りの模型を外注するよりも安価で、かつ任意のサイズで何度でも出力可能な3Dプリンタはビジネスニーズも高い。これからの奥村設計事務所の武器のひとつになることは間違いないだろう。
「今はサービスの一環として模型を作っていますが、この模型をきっかけに、大きな仕事につなげていきたいと考えています。今までも自分が良いと思ったことをやり遂げてきましたが、ちゃんとそれを認めてくれる方がいて、仕事が徐々に増えてきました。この3Dプリンタも、いずれは会社に大きく貢献してくれると確信しています」と奥村代表は語る。
手のひらサイズの重機も細かく表現
関連会社の株式会社グラフィッククリエーションにて、当社3Dプリンタ『3DUJ-553』を使用した出力サービスを行っております。これまでにない色鮮やかで美しいフルカラー3Dプリントをご体験ください。
TEL:0268-64-6500
受付可能時間:平日9:00〜17:00
株式会社グラフィッククリエーション
3D担当
ミマキのフルカラー3Dプリンタ『3DUJ-553』には、長年の業務用インクジェットプリンタの開発・製造で培ってきた独自技術を活かしたUV硬化インクジェット方式を採用しています。お見積りや仕様等、製品に関するお問い合わせはこちらでお受けいたします。
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株式会社ミマキエンジニアリング
IPビジネスユニット 3Dマーケティンググループ
※1:2017年8月現在 当社調べ