”ミニチュア大好き”のフルカラー 3Dプリンタ活用術
自社製「360度スキャナー」も販売へ!!
(株)ミニチュアイメージは2022年、徳島県徳島市で創業したスタートアップ企業。この会社、希少なミニチュア制作専門の業者として、ミマキの3Dプリンタ「3DUJ-2207」を導入し、1000万色のフルカラープリントを実現。その今までにないリーズナブルな料金と、こだわりの製品制作で注目されている。
さらに、センシング技術に関する知識があることから、3Dプリントのデータ作成で必要な「360度カメラ」を自作し、これを製品化し販売も視野に入れている。
楽しい驚きがいっぱいの同社取り組みについて、見野美智子社長に聞いた。
創業のきっかけは?
私がもともとミニチュアが大好きで、その延長線上で、ミニチュアづくりの仕事を始めました。
ミニチュアが好きになったきっかけは、小学生のころに発売されたシルバニアファミリー。あの精巧さに「なんて素晴らしいんだ」と感動し、この世界に魅了されました。私の父も鉄道模型のNゲージなどが好きで、その影響もありましたね。
結局シルバニアファミリーのおうちは買ってもらえなかったのですが、父がそっくりのミニチュアモデルを作ってくれたことから「ミニチュアを制作をする」ということにも魅力を感じました。
今でも自宅兼事務所に隣接する建物の1、2階すべてがミニチュアのコレクションで埋まっています。
そのミニチュアコレクションが増えすぎて、使わなくなったものを少しずつ売ろうとフリマサイトやオークションサイトに出し始めたのがミニチュアビジネスの始まりでした。
3Dプリントに興味を持ち始めたのは、ミニチュアドールを展示するためのドールハウスを多く持っているのですが、これも常にはすべて展示しておけないので、スキャンして少しサイズを小さくしたものを飾っておけないかと思ったのが始まりでした。
誕生プレゼントが事業に
フリマサイトやオークションサイトで出品していると、購入者から「こんなミニチュアはないか?」「このミニチュア家具の別サイズはないか?」といった問い合わせが来るのです。そういったものが在庫であればいいのですが、ないときに、それに応えてあげたい、そんな思いからも3Dプリンタが必要だと感じました。
「3DUJ-2207」は2021年に日本第1号機を導入したのですが、最初はビジネスのためではなく、誕生日に夫からのプレゼントとしてもらったものです。
「3DUJ-2207」以前も、それまでも無地の3Dプリンタでミニチュアを作っていたのですが、時間がかかる割には精度が悪く、思い通りのものができませんでした。さらに無地プリントの場合、後から着色をしなければならず、その手間と時間がかかり、イメージと違う色になるなど大変苦労しました。
このため、以前からフルカラーの3Dプリンタを探していましたが、数千万円と価格が高かったり、石膏素材で発色が悪い上に壊れやすかったりと課題が多く、手を出せないなと感じていたのです。
そこにミマキの「3DUJ-2207」が登場しました。
価格は約450万円、フルカラーで1000万色以上を、樹脂でプリントできるというので、これは私が求めていたものだと思いミマキさんに連絡しました。実際に製品を見て「納品できるようになったらすぐ導入したい」と伝えたところ、うちが日本初導入となりました。
予想以上の精巧さ!
実際にプリントしてみると、思った以上に商品は品質よくできました。
これをフリマサイトで販売すると「手作りのミニチュアに見える」「精巧で手作業で色を付けしていると思った」との声が寄せられました。
導入後は、使えば使うほど使い勝手の良さが見えてきました。
例えばサイズ展開。Nゲージは150分の1、シルバニアファミリーは約18分の1の大きさです。3Dプリンタでは、好きなサイズで製作することが可能です。これがデジタルプリントの良さで、元のデータがしっかりしていれば縮小拡大は自在です。
細かな変化をつけることも簡単で、例えばミカンですが、皮を剝く前と、剥く途中、剥いた後という3つの変化も簡単に再現できるのです。こういった小物は非常に人気の商品なのですが、これまではバリエーションを付けることが容易ではなく、それも手作業で作成するので仕上がりに大きなバラつきがありました。
「3DUJ-2207」はこれらの課題をすべて解決してくれたのです。
広がる用途
実際の商品はさまざまで、ミニチュア小物以外ではフィギュアの作成がメインになります。
記念写真のように、3Dで家族を撮影するケースが増えています。また「子どもの姿を3Dプリントにしたい」というお客様がいらっしゃいます。同じ縮尺サイズで、年齢ごとに並べて行けば、非常に分かりやすい成長の記録になります。
あとはペット、犬や猫などは一緒に暮らす家族ですが、成長も早く寿命は人間より短いため、その姿をとどめておきたいというお客様も多いのです。写真と異なり、360度、上からも下からも見ることができる上、触れることもできるので愛おしい家族やペットを写真よりも身近に感じられます。
このほか、子供のおもちゃや人形などを処分する前にスキャンする方や、取り壊し前の家や店舗などをドローンを使ってスキャンし3Dプリントにするといった方もいます。
アイドルのフィギュアなども需要があると考えており、当社では海外のCGクリエイターが制作したJOYというキャラクターをマスコットにして、さまざまなサンプルを作っています。データ上であれば、いろいろな服を着せたり、水着にしたり、ポーズも自由自在です。
スキャン代金は11,000円で、例えば人間を最も小さいサイズで造形した場合は3,000円ほどで提供できます。おそらくこれは業界最安値です。
安価にしたのは、3Dプリントという素晴らしいものをできるだけ多くの方に楽しんでもらえるようにと思ったからです。
スキャナー自作で安価に!
安くできるのは、当社がスキャナーを自作したからです。
それまでは、小さなものは卓上スキャナーで撮影し、人間などはハンディースキャナーを使ってデータを作成していました。しかしハンディスキャナーは、撮影者が手に持って人間をいくつもの部分に分けてスキャンしていくので、とても時間がかかる上、精度も高くありませんでした。一方で市販のスキャナーは、高価なものでは数千万円という買い物になってしまいます。これを購入しても、その元を取るために、商品の価格を高く設定しなければならないので、私はそれが嫌でした。
そこで、IT技術者である夫(見野健司氏)に「何とか自作できないか」と頼みました。夫は必要部材やセッティングなどを研究し、約半年で今設置されているスキャナーを完成させました。
3Dのデータはスキャン時の精度が大事なのですが、カメラもセンサーも良いものを使い、撮影時間はわずか0.5秒で正確なデータを取れることから、編集作業も楽にできます。
現在このスキャナーの販売計画を進めています。
この目的の一つは、せっかくいいものが完成したので、当社だけでなく、全国で3Dプリントに挑戦したいという方に使っていただきたいからです。
もう一つは、スキャンできる場所を全国に増やし、3Dで想い出や大切なものをミニチュアで残すという文化を広めていきたい。残念ながら、未だに一般の方たちは3Dプリンタやプリント技術について、どのように利用したらいいか、どこに行ったら利用できるのかを知りません。当社がスキャナーを拡販することで、さまざまな場所で同時多発的に3Dプリントを盛り上げ、一般の方たちに知っていただきたいと思っています。
価格は300万円ほどを予定しており、導入のハードルを低くし、多くの方にこの素晴らしいミニチュアの世界を体感していただきたいと思っています。
企業・団体プロフィール
- 名称株式会社ミニチュアイメージ
- 業種フルカラー3Dプリンター・3Dスキャナーによるミニチュア小物・フィギュア・ジオラマ・住宅模型等の製作・販売
- 住所徳島県徳島市名東町3-1-2
- 電話番号090-7787-8771
- URLhttps://mini-image.jp