有限会社 岡本染工(石川県金沢市)

課題
改善
加賀友禅の世界の活性化。
デジタル技術を活用し、低コストな染めと製品化を実現。伝統工芸とデジタル技術の双方の良さを活かすことで、幅広く消費者のニーズに対応。

初めてそのプリンタに触れた時、革命だと思いました。
デジタル技術で伝統工芸の世界を活性化する。


社長・加賀友禅作家 岡本 幸治 さん

有限会社 岡本染工(石川県金沢市)
(業種:手描友禅工房)

導入機器:デジタル捺染インクジェットプリンタ「TX2-1600

社長・加賀友禅作家 岡本 幸治 さん


加賀友禅の作業風景

石川県を代表する伝統工芸品、加賀友禅。江戸時代に金沢の気候風土に合わせて確立された染物の技法とその作品のことで、加賀五彩(紅、黄土、緑、藍、紫)と呼ばれる艶麗な色彩で知られる。柄は、図案調の京友禅に対して草、花、鳥の写実的な絵画調の物が多く、「ぼかし」「虫食い葉」等独自の装飾がある。


【伝統工芸とデジタル技術の融合】
金沢市で、手描友禅の工房「岡本染工」を経営する友禅作家、岡本幸治さんは、デザインを描き、職人たちを指揮しながら昔ながらの伝統的技法で友禅染を創作する一方、自らの描く加賀友禅のデザインをコンピュータに取り込み、ミマキエンジニアリングのインクジェットプリンタによって出力することで、低コストな染めと製品化に取り組んでいる。


「私どもは、手作業で何十年に亘ってやっているわけだけれども、初めてミマキさんの機械を見せていただいた時に、革命だと思いました。何でこんなもんで染め物ができるんや?ということですね。デザインをコンピュータ上でいったん作り上げれば、それを再現するために、インクジェットが自分で動き出すというのが、本当に私自身は、素晴らしいと思います。ただ、普通のペーパーに刷り上げるというのと、布に染め上げるというのでは、似てはいるけれども、質的に全然違うんですよ。ですから、デザインをプリントアウトして、染め上がって、実際のものに変わった時に、色の客観的な質とか重さなどいうものを、作家としてどう満足のいくものにしていくかというのが難しかったですね。今でも難しいです。それでもね、インクジェットで染め物ができるというのは、今でも革命的だと思っていますけどね。」

【加賀友禅のデザインでアロハシャツを】
自らのデザインを職人を使わずにインクジェットプリンタによって直接布に染め上げる。低コストでの染めを実現することで、岡本さんはその布を使ったアロハシャツ(友禅シャツ)の制作・販売に結びつけている。

「どうして金沢でアロハシャツなのかということはよく質問されるんですけれども、まず魅力だったのは、襟とか形がある程度決まっていることです。パターンが色々あるとそのことだけで大変なんですよ。もう一つは、染めるモチーフですけれども、アロハシャツは元々日本の着物の布地から作られたものですから、いわゆる和柄、私の友禅のデザインが有効に活かせるんじゃないか、という、その二つの面の有利さからアロハシャツに取り組んでいるわけですね。」


[NEWS]

【友禅作家としてデジタル技術を活かす】
数百年という歴史を持つ伝統的な技法と匠ならではの鋭い目をもつ友禅作家として、岡本さんは、積極的にデジタル技術を活用していこうと考えている。伝統工芸の良さとデジタル技術、双方の良さを活かすことで、加賀友禅の世界を活性化しようというのだ。

写真:友禅染めの風景

「私自身はデジタルに将来はあると思っていますが、伝統工芸の良さというものは当然あるわけですよね。伝統工芸そのものは、今、手間暇がかかり過ぎるということで、世の中から少し重たく感じられています。買う人にとって、手入れや値段が負担になったり。ですから、私はこの加賀友禅をもっと簡単に買えるとか、簡単に着られるとか、そういう風なものも作りたいということがあるんですね。だからデジタル技術が役に立つ。手染めとインクジェットプリントの違いは、私がデザインしたものが、どういう風に再現されていくかというだけの問題ですからね。伝統工芸の質の重さ、本物感を十分に出しながら、それが、ある程度安く供給できる、それは消費者にとってサービスです。是非そうしないといけない。ですから少しはライトなものとヘヴィなものとが両方いけばいいんじゃないかと、思っていますけどね。」

【ミマキへの要望】
染め物としての再現がデザイナーと機械だけでできることが最大のメリットではあるが、その再現性はまだ伝統的技法には追いついていない。その点を次のように話す。

「初めは手描きの65%ぐらいの再現性でしたが、繰り返しやっていくうちに、経験によるのか、80~85%ぐらいは来ているんじゃないかな。まあ、それで私は製品としては充分にイメージされると思うけれど、染料のパワーがもうちょっと上がればもっといいかなーという感じがしますね。色のパワーというのは、たとえば同じ紺でも軽い紺とか重い紺とか、いろいろあるんですけれど、質的な問題で、なかなか説明は難しいですね。ミマキさんの作るインクには期待するところが大きいのですけれど、科学的には非常に難しいところらしいですから、なかなか容易には動かんでしょうが。だけど最近はそういう風に思わない方が良いのかなあという気がします。例えば85%で、それはそれで、特長のあるものというのを心がけています。」


[NEWS]

【拡大していきそうなデジタル技術の活用】
岡本さんが切り拓いてきた伝統工芸とデジタル技術の融合。その世界は、今、大きく拡大していこうとしている。

写真:プリント作業

「今は現実には、シャツ関係への活用がほとんどで、それを足がかりにして、色々ものを開発したいと思っていますし、様々な依頼が来始めているのも事実です。ちょっと具体的には、今は、まだ申し上げられないんですが、皆さん、世の中にあんまりないものを作ろうとされていますから、そういう意味では秘密なんですよ。今、それを具体化するために、ミマキエンジニアリングさんにも、無理を言うとるんですけど(笑)、おそらくそういうものの中から、いくつか具体化されていくと私は思っています。どこまで可能性が広がるか分かりませんが、やはり、デザインする、そして染めるということが、一つの私の目指すところですね。本当に夢みたいですよ。自分がデザインをこうしたいというのが、いろんな方の手を経ずに全部、インクジェットが代わってやってくれるというのは…。本当に今でも夢みたいに思っています。」

プリントサンプル


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