「UJF-6042MkII e」を導入いただいている株式会社ダイドーバッグス様の事例が、印刷業界専門誌「月刊プリテックステージ 増刊 デジタル印刷ビジネスBook 2022秋」にて掲載されました。
以下に掲載された記事を原文のままご紹介いたします。
“AnNon.”ブランドを立ち上げ、オリジナルバッグ販売へ
ミマキプリンターで皮革素材へダイレクトプリント
革製バッグメーカーの株式会社ダイドーバッグスは、ミマキエンジニアリングのフラットベッドUV-LEDインクジェットプリンター『UJF-6042MkⅡ e』を活用し、自社ブランド製品の販売に乗り出す。
同社は1959年にハンドバッグメーカーとして東京都台東区で創業した。バッグの国内製造は専門職による分業構造で、家内工業の色が強い。創業当初から同社も職人への外注でバッグを製造していたが、2006年に中国、2013年にバングラディッシュに自社工場を開設し、皮革素材の仕入れから製品化までの一貫生産を開始。2015年には現在の埼玉県三郷市に移転して国内生産を始めた。
同社代表取締役の松波直樹氏は「今は全てを国内生産に戻して6割を内製化しています。当社のように仕入れから製品まで、工場内で全て賄える業者はまれです。同じものが大量に売れる時代ではありません。進展する小ロット化に対応しています」と述べる。主にハイブランドのOEM製品、ODM製品を供給し、一貫生産により小ロットから受注できる体制を整えている。
かつては自社ブランドを立ち上げ、製品の卸しも手掛けたが、様々なブランドの製品を扱うバッグの専門店が減少したことで、自社ブランドを卸す先が広がらず、断念した経緯がある。このため、ここ15年間は製造・設計の受託に特化し、ブランドオーナーの裏方としてモノづくりに専念してきた。ただ、松波氏の“いつか自社ブランドを持ちたい”という思いは脈々と息づき、次の機会を待っていた。
松波氏は昨年秋ごろ、自社ブランド製品をネットで販売するプランを練り始めた。取引先が導入したミマキエンジニアリングのUVインクジェットプリンターを見て、オリジナルの絵柄が小ロットで印刷できることに可能性を感じたためである。
同社で製造するバッグに印刷が必要な場合は、シルクスクリーン印刷の業者に仕入れた皮革を持ち込む。シルクスクリーン印刷は大量印刷が前提なので小ロット生産が難しく、グラデーションなどシルクスクリーン印刷に向かない絵柄もある。UVインクジェットプリンターであればそうした制限がなくなり、在庫を抱えるリスクも非常に低い。印刷が上がるまでに外注では数週間かかるが、内製化ができればプリントから3日間で製品が仕上がる。
「UVインクジェットプリンターを導入している取引先に外注しようとしたら、1個5,000円もかかるというのです。自分でプリンターを持てばインク代や時間コスト、償却費を見てもコスト減につなげられるので、それならいっそのこと購入しようと」。今年5月には公的な補助金の認可を受けることができ、良い条件で導入できる目途も立った。
ほとんどの取り扱い素材に密着
ホワイト、クリアインクで多彩な表現
同社のブランドは“AnNon.”。“安穏”をコンセプトにしたもので、心の落ち着きや休息=平和を届けたいとの想いが込められている。また、“an=ある”、“non=なし”という意味を持たせた。ここから「自然と笑顔になれるアイテムがある?なし?」と訴えかけ、「お気に入りを自分の横に置いてみては」という提案につなげている。
自社ブランドを販売するサイトは今年中に開設する予定。販売価格は3万円から5万円を想定している。
「現在、様々な皮革素材のテストプリントを重ねています。当社で取り扱う素材のほとんどでインクの密着性に問題はありません。曲げてもインクが割れるということはなく、インクジェット特有の筋も見られません」。凹凸のある素材でもインクが乗るほか、ホワイトインクの濃度が高いため、濃色素材に白でデザインすることもできる。またツートーンカラーの革製のバッグの場合、異なる色の素材を縫い合わせる必要があるが、『UJF-6042MkⅡ e』で印刷すれば縫い合わせる工程が不要になる。
インクの構成はCMYK+白+白+クリア+プライマー。クリアは艶出しでの使用を想定している。UV光にはLEDが採用されているため、熱の影響を受けやすいエナメル系の素材でも伸縮することがない。布地のプリントもテストしており、様々な素材に対し、多彩な表現が可能になる。
自社ブランドのバッグを販売するサイトでは、革製バッグ以外にも、布地やエナメルのバッグをはじめ、ストラップやショップの卓上POPなどの“革製グッズ”の販売も考えている。「今まで当社にできなかったことができるようになります。様々なグッズが簡単にできてしまいます」と商材の広がりを期待している。
操作性については「家庭用プリンターと同じような感覚で使えます。全く難しくありません」と評価。「今は自分ひとりが使っていますが、ゆくゆくは従業員にも任せていきます。プリントをスタートさせれば付きっ切りになる必要がないので、他の作業を並行して進めることができると思います」と、多能工を進めている同社には人的資源の有効活用にもつながる。
やがては絵柄のデザイン機能獲得
オリジナルプリントの需要開拓
同社ではバッグの設計から請け負う。形状のデザインも得意だが、絵柄のデザインは外注に頼らざるを得ない。
「いずれはオリジナルの絵柄をデザインできるようになりたいと考えています。OEM先にも製品へのオリジナルプリントを勧めているのですが、デザイン画を企画できるデザイナーがあまりいないので、話が先に進まないのが現状です」
『UJF-6042MkⅡ e』を導入した目的はまず自社ブランドのネット販売の確立。最終的には自社に絵柄のデザイン機能を取り入れることで、自社製品に自由な発想を反映するとともに、取引先のブランドオーナーにオリジナルプリントの提供を見据えている。
松波氏は「小さいころから革のバッグがそばにありました」とバッグメーカーとしてのモノづくりに熱い想いを秘めている。時代とともに変化する需要も間近に見てきた。現在、多くの製品が小ロット・多品種へと移り、さらに個々の嗜好に合ったオリジナル性が求められ始めている。同社の新しいモノづくりのチャレンジに応える『UJF-6042MkⅡ e』への期待は高い。
企業・団体プロフィール
- 名称株式会社ダイドーバッグス
- 業種皮革製品を中心としたレディースバッグ及び小物、メンズバッグの製造
- 住所埼玉県三郷市戸ヶ崎2-674
- 電話番号048-960-0600
- URLhttps://daidohbags.com/