3D模型でシミュレーションすることの最も大きなメリットは、
動物たちの負担が減るということ。
3DFF-222導入の決め手
- サポートやメンテナンスの充実
- 導入しやすい価格帯
1冊の本との出会いから3Dの世界へ
CTデータを3Dプリンタで出力しようと思い立ったのは、医師であり、起業家でもある杉本真樹先生の「医用画像3Dモデリング・3Dプリンター活用実践ガイド」という本との出会いでした。CTで撮ったデータを3次元化し、それを3Dプリンタで出力することで骨や臓器を立体的に確認できると知り、「これは動物の治療にも活かせるはずだ」と思ったのが挑戦したきっかけです。
それからアマゾンやヤフオクで3Dプリンタを購入しては、自分なりにいろいろと試してみたのですが、なかなかうまくいかなくて。ネット購入は簡単ですが、機器に対するサポートがなく取扱説明書も英語で書かれているため、何が原因で出力できないのかわからないこともよくありました。そんな時に地元の新聞で、ミマキさんが小型の3Dプリンタ「3DFF-222」を発売したという記事を読んだんです。
ミマキさんのことはもちろん知っていましたが、それまでは大型のインクジェットプリンタを製造している企業という認識でした。それが小型の3Dプリンタも扱うようになったということで、ミマキさんならサポートやメンテナンスもしっかり対応してくれるのではないかと思い、すぐにネットで問い合わせました。
丁寧なサポートでやりたいことを実現
営業の方が最初に来てくださったときに3DFF-222で出力したサンプルをたくさん持ってきてくれたんです。自分が出力したいもの、やってみたいことについても理解してくださって。価格的にも購入しやすかったですし、コンパクトなサイズでスペース的にも問題がなかったので、すぐに導入を決めました。その後はさまざまな問い合わせにも迅速に対応していただき、本当に助かっています。
例えば犬に多い椎間板ヘルニアなどは骨の中を確認したいのですが、CTで撮った画像をそのまま3DFF-222で出力すると、骨の中は閉じてしまっていてわからないわけです。そこでデータ上で骨を半分に割って中が見えるように出力しようとしたのですが、どうにもうまくいかない。困ってミマキさんに連絡したところ、無料の3Dキャドを介することで、うまく出力できるようになると教えていただきました。結果として縦半分にした骨模型から、飛び出している骨の形や向き、大きさなどまでしっかりと確認することができ、どのようにメスを入れてどのように骨を削っていけばいいのか、手術前にしっかりとシミュレーションできるようになりました。
3D模型でシミュレーションすることの最も大きなメリットは、動物たちの負担が減るということです。術前シミュレーションで手術時間が短縮でき、また必要以上に大きく切開することもなく傷口を最小限にできるため、低侵襲で負担の少ない手術が可能になりました。また飼い主さんへの説明の際にも、具体的に目で見てわかる状態でお話ができるため、安心してお任せいただけるようになったのではないかと思います。
3DFF-222で検査から手術までの流れが効率化
3DFF-222の出力にかかる時間は、犬や猫の骨の出力であれば、だいたい4時間~6時間ほど。CTデータを夜のうちに3DFF-222に送っておけば朝には仕上がっていますので、診療、検査から治療方針を決め、飼い主さんへ説明して手術、といった流れが非常に効率的にできるようになりました。
CTデータを送付すれば3D模型を出力してくれる企業もありますが、時間のロスが大きいですね。すべての段取りを自分のペースで行えるという点も大きなメリットです。
さらに3D模型を使って説明することで、診療の際に飼い主の方にCT検査の重要性を理解していただけるようになりました。動物の場合、CTや手術にはそれなりの金額がかかってしまいます。CTと3D模型の併用で的確な治療法がわかることや、術前シミュレーションで低侵襲な手術が可能になることを伝え、CT検査への理解を深めています。
導入して半年あまり。まだまだ3DFF-222を活用した症例自体は少ないのですが、これまで重ねてきたデータを元に、今後は内視鏡による治療も視野に入れ、3DFF-222を一層活用していきたいと考えています。
3Dプリンタによる獣医療の可能性を感じて
治療に際し非常に有用な3D模型ですが、希望を言えばシミュレーションをする際に、実際に高速ドリルで削ることができればなお良いですね。今の素材は熱で溶けてしまうので、骨が手に当たった時の感触や削る際の質感はわかりません。硬さや質感などが骨に近い素材があれば、さらにリアルなシミュレーションが可能になると思います。
また、生体に埋め込んでそのまま吸収されるような素材で3D形成ができれば、それぞれの骨の形やカーブなど、個体ごとにカスタマイズされたものを作ることができ、より低侵襲で安全な治療ができるようになるのではないかと思います。
例えば犬や猫が骨盤を骨折した場合、金属の板とボルトで骨盤の骨を固定する整復手術を行うのですが、骨盤の微妙なカーブに合わせて金属を添わせる作業は手術中にその場で行います。そうすると手術時間も長くなりますし、骨が固定されたところで今度はボルトと金属板を取り外すために、もう一度手術をしなくてはなりません。二度の手術は小さな犬や猫にとってかなりの負担です。それが1回の手術で、事前にベストなカーブをつけた板とボルトでさっと止められて、そのまま吸収されてしまえば取り外す必要もないわけです。非常に大変なことなのでしょうけれど、それが可能になれば獣医療はさらに発展すると思います。
ミマキさんの3Dプリンタは医療用ではありませんが、工業分野と獣医療分野の橋渡しとして、今後もさらに製品の開発に取り組んでいただければと思います。
小諸動物病院
長野県東信地域の動物病院。
昭和58(1983)年に開業し、平成10(1998)年に現在の地に移転。開業以降36年にわたり、主に犬や猫、うさぎ、小鳥などのペットの病気やケガの治療に当たっている。
平成18(2006)年には姉妹病院である「うすだペットクリニック」を開業。歯科医療等で既に実用化が進む3D技術を活用し、CTと3Dプリンタを併用した治療によって低侵襲の手術を可能にしている。
<導入製品>
FFF方式デスクトップ3Dプリンタ:3DFF-222
企業・団体プロフィール
- 名称小諸動物病院
- 業種動物病院
- 住所長野県小諸市御影新田2728-1
- 電話番号0267-23-6644
- URLhttps://www.komoro-animal.jp/