老舗企業の新たな挑戦、自社製品開発で新ブランディングを行う:株式会社中川紙宗様

課題
改善
「紙だけではない印刷会社」として、新たなビジネス開発の道を模索していた。
UVプリンタ「UJF-7151 plusII」を導入。さまざまな素材にプリントでき、高精細プリントで粒状感のない印刷品質を武器に、パッケージデザイン以外にも、アートパネルやマグネットなどの分野に進出。新規ビジネス開拓を行っている。

導入した製品

UJF-7151 plusIIを導入いただいている株式会社中川紙宗様の事例が、印刷業界専門誌「印刷ジャーナル」の「インクジェット特集号」にて掲載されました。

以下に掲載された記事を原文のままご紹介いたします。



老舗企業の新たな挑戦、自社製品開発で新ブランディングを行う


「知恵の経営」を実践する6代目・中川社長

「知恵の経営」を実践する6代目・中川社長

 創業148年を誇る京都の印刷会社、(株)中川紙宗(本社/京都市下京区四条通油小路東入傘鉾町49、中川謙治社長)は今年1月、自社製品開発における紙媒体以外へのアプローチとパッケージサンプル作成のためのデバイスとして、ミマキのフラットベッドUV-LEDインクジェットプリンタ「UJF-7151 plusⅡ」を導入。BtoBの市場を睨みながら、高精細プリントで粒状感のない印刷品質を武器に、アートパネルや複製画などの分野に進出するとともに、「紙だけではない印刷会社」としての新たなブランディングに乗り出している。


再現性が高く評価されるアートパネルのサンプル

再現性が高く評価されるアートパネルのサンプル


京都ならではの「知恵の経営」実践


 同社の創業は明治7年。いわゆる「木版」の技術によって、繊維の町として知られる京都・室町筋の呉服問屋向けに着物や帯を包む畳紙(たとうし)をはじめ、大福帳や下げ札などの帳票類を提供する「紙製品業」を生業に成長を遂げた企業だ。

 一方、戦後に入ると「ダルマ糸」ブランド(横田(株)/大阪市中央区)の箱の受注をきっかけに、パッケージ印刷事業に軸足を移し、現在でも繊維関係や観光需要(お土産品など)を中心に、売上全体の約6割がパッケージ印刷という事業構成になっている。

 老舗企業が持つ京都特有の経営資産(事業継続、事業承継の秘訣)の有効活用を目的に設立された「京都老舗の会」にも所属する同社。創業148年の歴史を誇る印刷会社として、京都ならではの「知恵の経営」を実践する6代目・中川社長は、自社の強みについて「商品包装やパッケージに携わる長い社歴の中で数々の実績とともに、多くの失敗も繰り返してきた。『オンリーワン』ではないが、その経験にもとづく制作ノウハウは最も重要な経営資産であり、当社最大の強みである」と語る。取扱商品の素材や技術などが大きく変化する一方で、先人の知恵を生かしながら顧客の声を「カタチ」にするという基本コンセプトは不変であり、その経営姿勢こそが京都企業のブランド力そのものである。今回の同社の設備投資も、そんな経営姿勢の延長線上にある。

紙媒体以外で自社企画製品を

 菊全判オフセット印刷機とトナーPOD機を設備する同社が、今回新たにインクジェット技術への投資を決断した背景には、148年の社歴の中で幾度となく繰り返してきた「事業変革」の実践において、「印刷会社として自社製品を手掛ける」というミッションがあった。

 「当社の製品は間接資材がほとんどで、これまで自社製品と呼べるものがなかった。そこでコロナ禍の挑戦のひとつとして、自社企画の文具製品のネット販売を開始している。しかし、その中で『紙媒体だけでは限界がある』という声が企画からあがった。商品群の拡充には紙以外に印刷できるデバイスが必要だった」(中川社長)

 以前から「トナーPOD機では対応できない素材へのアプローチ」を考えていた同社。インクジェットプリンタは、その最有力候補として研究を重ねていたこともあり、事業再構築補助金の活用も視野に入れながら、企画部門からの声に後押しされる形で設備投資への検討を本格化させた。

 そこで機種選択のポイントになったのは「紙以外への印刷適性」はもちろん、「パッケージサンプル作成に適した印刷サイズ」という要件もあった。

 「パッケージサンプルを作成する際、せめてB2サイズが出力できないと実用性に乏しい。一方で、当社のオフセット印刷機は菊全判サイズ。それ以上の出力サイズ対応プリンタでサンプルを作っても量産ができない。このサイズ感で厚紙に対応するフラットベッドタイプとなると機種はかなり絞られた」(中川社長)

 そして最終的にすべての要件をクリアしたのがミマキのフラットベッドUV-LEDインクジェットプリンタ「UJF-7151 plusⅡ」だ。2022年1月に実機が本社内に設置され、2月から商業ベースで実稼働している。


「創作意欲を掻き立て、果敢に挑戦できるプリンタ」と評価

「創作意欲を掻き立て、果敢に挑戦できるプリンタ」と評価


小型UVフラット機のハイパフォーマンスモデル


 「UJF-7151 plusⅡ」は、カラーグロス機能による新たな表現、1800dpiの高精細プリント、「MFD2(Mimaki Fine Diffusion2)」による粒状感のない品質、「MDL(Mimaki Device Language)コマンド」によるワーク搬送の自動化機能などを備えた、小型UVフラット機のハイパフォーマンスモデル。ヘッド構成を従来モデルの6ヘッドから8ヘッドに拡張したことで、4色カラー構成では速度重視の4色ダブル(4色×2)や、LcとLmが含まれた6色カラー構成ではより繊細な色表現が用意された。今回、中川紙宗が導入したのは、CMYK+Lc+Lm+白+プライマーの仕様だ。

 使用インクの関係で同社では活用していないが、おもしろい機能としてカラーインクのみでグロス調を表現する「カラーグロス機能」がある。UVプリンタの場合、インクをヘッドから吐出した瞬間に硬化させるため、インク被膜が平滑化されず、マットな表現になってしまう。そこでカラーグロス機能は、インクを瞬間的に硬化させず、インクが滲まない程度に平滑化されるまで時間を掛けながら硬化させていくUV照射技術。クリアインクでのグロス調とは違う風合いとディテールを実現する。

 一方、画質向上を図るため、ドットの着弾位置をコントロールする「MFD2」に対応するとともに、1800dpiの印刷モードを新たに搭載したことで、より粒状感や色ムラの少ない、高精細なクオリティーを実感できるのも大きな特長である。

 また、新技術の「MFD2」は、ハーフトーニング処理において、誤差拡散とディザパターンの両方の処理方法を組み合わせた技術。1800dpiとこの機能により細線の再現性が飛躍的に向上しているという。

アートパネルで高い品質評価

 同社にとって今回の設備投資の目的は「事業変革への挑戦」にあるため、当然、「仕事ありき」の投資ではないことから、企画部門では様々な形状への印刷適性やインク密着性などのテストを繰り返しているという。


多彩なグッズサンプルを作成

多彩なグッズサンプルを作成


 「UJF-7151 plusⅡ」は15.3センチ厚までのメディアに印刷できるため、完成した箱やパッケージ、紙袋などへのダイレクト印刷も可能だ。また現在、マーケットプレイス「Creema」(https://www.creema.jp/creator/4641675)で缶バッチやマグネットなど小さな商材を販売しているが、「あくまで個人ユースに留まっている」(中川社長)とし、今後の事業展開においてはBtoBの市場を開拓していく考えを示している。

 その足掛かりとして、ネットショップ作成サービス「minne」上で、アートパネルの販売(https://minne.com/@e-kamiso)を開始している。前述の通り、「UJF-7151 plusⅡ」は、1800dpiの高精細プリント、「MFD2」による粒状感のない品質が特長で、その画質はアートパネル、複製画などの分野で評価が高い。中川社長は、「UJF-7151 plusⅡの品質および機能面は、期待値を大きく上回っており、スタッフの創作意欲を掻き立て、果敢に挑戦できるプリンタであると言える」と評価した上で、「今後の課題は後加工のノウハウだと思う」と語っている。

 今後は、BtoBビジネスへのアプローチとして、積極的に様々な展示会へ出展することで、印刷ビジネスとは少し異なる新たな販売ルートの開拓に乗り出し、「紙だけではない印刷会社」としてのブランディングを進めていく考えだ。

 「印刷会社が見て、『これ、どうやって作ったの?』と驚かれるようなものを作りたい。その出力機としてUJF-7151 plusⅡに大きな期待を寄せている」(中川社長)


企業・団体プロフィール

  • 名称株式会社中川紙宗
  • 業種商業印刷、パッケージ製造、カード印刷、企画デザイン
  • 住所京都府京都市下京区四条通油小路東入傘鉾町49
  • 電話番号075-241-3121
  • URLhttps://n-kamiso.co.jp/

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