秩父神社所蔵の彫刻「つなぎの龍」を3Dプリンタで作成
秩父神社(埼玉県)では、創建2100年奉祝事業である本殿の改修工事が2018年から約5年間かけて大規模に行われている。このタイミングで、日光東照宮の「眠り猫」などを作成した江戸の名工「左甚五郎」制作の彫刻作品「つなぎの龍」を複製し、奉納するプロジェクトが開始された。
有限会社原製作所 様が3Dスキャンと3Dデータ製作を行い、ミマキエンジニアリングのフルカラー3Dプリンタ「3DUJ-553」で3Dプリントを実施、株式会社晃和ディスプレイ 様がショーケースを制作した。
フルカラー3Dデータを使って江戸の名工の技術を忠実に再現
「龍を彩っている青色は、江戸時代では天然石を砕いた岩絵の具で着色しているものなので、再現するのが難しくかなり試行錯誤しました」と語るのは、有限会社原製作所 代表取締役社長の原 洋介さん。高精度フルカラー3Dスキャン技術を用いて、「つなぎの龍」を360度スキャンし、3Dデータ化した。その3Dデータをミマキエンジニアリングのフルカラー3Dプリンタ「3DUJ-553」で3Dプリントし、「つなぎの龍」実物の1/5サイズとして形作った。1000万色以上のフルカラー3Dプリントにより、鮮やかな色彩を忠実に再現した。
一般的に文化財の保護というと、手作業で行うことが多い。今回の復元には、彫りや手塗りなどの手作業は一切行わず、3Dデータと3Dプリントだけで複製した。
3Dデータ製作を行った原さんはこう語る。
「そもそも色付きのデータを3Dプリントすることが今までありませんでしたが、ミマキエンジニアリングさんのフルカラー3Dプリンタがものすごく色の表現が豊かで、フルカラーのデータを忠実に再現できました。3Dデータだけでもできないし、3Dプリンタだけでもできない。そこが融合したのが一番魅力だと思います」
江戸時代の文化財を後世に伝えていくために
さらに原さんは「世の中には文化財と呼ばれるものがたくさんあります。震災があったり、自然災害があったりしていつなくなってしまうかわからない。だからこそ、3Dデータとしてまずはアーカイブ化して、保存して残していければと思います。データがあれば修復のきっかけになると思うので、そういったところで3Dスキャンの技術を役立てていきたいです」と語る。
遠くから見ていた彫刻を間近で見られるように
このたびのプロジェクトに関して、秩父神社で権宮司を務める薗田氏は、以下のように話す。
「400年の歴史を誇る左甚五郎の技術を現代の3Dプリンタの技術で記録をしておこうという一つの取り組みでした。江戸時代初期の洗練された技術をどれだけ3Dプリンタで再現できるかということの挑戦という意味もございました。通常は社殿の下からしか見ることができないつなぎの龍を360度どこからでも見ることができ、間近で見ることで彩色の絶妙な表現の仕方も改めて分かりました」
奉納された「つなぎの龍」複製品は、秩父神社境内内の秩父神社会館にて特別展示として展示されている。
今回の使用製品
3DUJ-553
UV硬化インクジェット方式フルカラー3Dプリンタ - 1,000万色以上のフルカラー造形を実現
3DUJ-553|製品情報
企業・団体プロフィール
- 名称秩父神社
- 業種宗教法人
- 住所埼玉県秩父市番場町1-3
- 電話番号0494-22-0262
- URLhttp://www.chichibu-jinja.or.jp/