Mimaki 3DUJ-553でリアルな人体解剖模型を実現し新境地を開く:モナシュ大学様

課題
改善
石膏方式のフルカラー3Dプリントでは色の再現性が低く、壊れやすい材質のため強度を高めるための後処理にも時間がかかる上、完成したモデルもリアルさと耐久性に欠けていた。
3DUJ-553フルカラー3Dプリンタの正確な色再現性により、本物に近い見た目の解剖学的モデルの製作が初めて可能となった。完成したモデルは丈夫で取扱い中に破損するリスクも大幅に低減した。

導入した製品

メルボルン、モナシュ大学の解剖学・発生生物学部、人体解剖学教育センター(Centre for Human Anatomy Education)併設の3Dイノベーション・デザインスタジオ(3D Innovation and Design Studio)は2015年、ドイツの解剖学モデルプロバイダー、エルラー・ツィマー社(Erler-Zimmer)とのコラボレーションで話題を呼びました。この提携により、解剖学的にも正確なフルカラー3Dプリントモデルで製作された人体模型シリーズ一式が発表され、医学分野の学生教育に革命的な変化をもたらしました。


3Dイノベーション・デザインスタジオ、Michelle Quayle氏

3Dイノベーション・デザインスタジオ、Michelle Quayle氏


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人体解剖学教育において、これまで「絶対的な基準」をなしてきたのは「献体(解剖用に提供された人体そのもの)」ですが、この古くからある教育方法は調達の難しさに加え、倫理的・コスト的に多くの課題を伴っています。
献体に防腐処理を施せば耐用期間は延長できるものの、人体組織の自然な色彩、質感は変化するため、医学的な価値も下がってしまいます。

また、教育上の一貫性という観点においては、献体は個々に異なるため、学生たちはそれぞれ微妙に異なる解剖学的特徴に注意しながら学習する必要があります。希少な疾患症例では、特定の病態を調べる機会がないため、研究が困難な場合もあります。

モナシュ大学はフルカラー3Dプリント技術を駆使し、これら解剖学の献体に伴う課題とは無縁で、かつ一貫した学習成果を得るために必要な、解剖学的にも正確な人体模型を作成する手法に可能性を見出しました。


既存手法の課題に立ち向かう


最初に3Dプリンタで製作した人体模型シリーズでは、石膏方式のフルカラー3Dプリンタ(石膏の粉にバインダーとカラー顔料インクで着色しながら積層する方式)で製作されました。このシリーズは色の再現性が低く、壊れやすい材質であったため、強度を高めるための後処理が必要でした。すると必然的に、モデルの製作時間は想定された以上に多くの時間がかかり、完成したモデルもリアルさと耐久性に欠けるものでした。
そのため、モナシュ大学のチームは、より正確な色表現と、解剖学的に必要のある人体組織のさまざまな質感を忠実に再現したモデルへの移行を望んでいました。

教科書に載っている人体模型のような「静脈は青、動脈は赤」という標準的な表現形式を、そのまま解剖学的な3Dモデルに置き換えることは、医学生が初めて解剖学を正確に立体的に認識させるために、有効な手段です。しかしながら研究チームは、形状のみならず色彩面でも、本物の人体組織のリアルさに近づけたいと望んでいました。
例えば、病理学のような分野では、人体組織の色の違いも基本的な診断方法として重要であり、教育用模型にも正確な色彩再現性が要求されます。

最初の石膏方式で製作された人体模型シリーズに対してユーザーから寄せられたフィードバックには、パーツが壊れやすいというものが挙げられていました。特に学生が実習する教育現場で何度も模型を使用した場合にどうなるかが指摘されていました。

さらに、3Dプリンタのベッドサイズの制限もあり、一体の解剖学モデル製作にあたり、最大11個も分割された3D出力パーツが必要なときもあります。これらのパーツは接着剤で貼り合わせる工程が必要なため、時間がかかるだけではなく、接合面がモデルの強度にも影響し、使用中、あるいは輸送中に破損することもありました。

また、石膏のパーツは重量があり、大型パーツについては内部の粉体を抜くための取り出し口を設けた中空形状に設計する必要もありました。チームは、用途に応じた十分な強度を保つことができる中空構造の設計と、中空構造内部から残った粉体を排出することが至難であることに気づきました。そのため、石膏方式の代替技術を模索・試行していたモナシュ大学研究チームでしたが、いずれの候補も色再現性が低く、原材料も高価であったため、望ましい解決策を見出せずにいました。

そんなあるときMimaki 3DUJ-553のデモンストレーションを目にして状況が変わりました。


3DUJ-553のプリントベッドにより、大型モデルを一体のままプリント可能になる

3DUJ-553のプリントベッドにより、大型モデルを一体のままプリント可能になる


解剖学的モデルに生命を吹き込む


いくつもの選択肢を検討していたチームは、シドニーでMimaki 3DUJ-553を見学したときに、その正確な色再現性にまず感銘を受けました。
さらに検討を進めたところ、3D出力された完成品のパーツは丈夫であり、手触りも良好で、微細なモデルの特徴も視認性を損なわずに、更にパーツを支えて補強するためのクリアパーツまで造形が可能であることがわかりました。

そして、3DUJ-553の1,000万色以上の色再現能力により、本物に近い見た目のモデルの製作が初めて可能となりました。
モナシュ大学の研究チームは、CTスキャンで得られた3Dデータをフルカラー3Dサーフェスデータと重ね合わせ、健康な状態と病気の状態の両方を解剖学的に正確な人体組織として再現することができます。

また、内部構造を表現できるクリアパーツの3D出力も可能になったため、学生がこれらの人体模型を使った学習では、実際の患者を相手に行う臨床体験に近いものになりました。神経や血管の微細構造も、クリアパーツで支えて保護しているので、視認性が損なわれません。
これにより、取り扱い中にモデルが破損するリスクも大幅に低減し、教育環境におけるモデルの耐久性を向上することができました。

3DUJ-553の大きなプリントベッドは、大きなパーツを分割せずに一体のままで出力ができることに加え、複数の小さなパーツはより効率良くレイアウトすることで高い生産効率を発揮します。


CTスキャンより生成した冠動脈循環系モデル

CTスキャンより生成した冠動脈循環系モデル


教育機会の向上


3Dイノベーション・デザインスタジオ、Lucy Costello氏

3Dイノベーション・デザインスタジオ、Lucy Costello氏


Mimaki 3DUJ-553の採用により、モナシュ大学チームは従来の3Dプリント技術では不可能であった、実物そっくりな解剖学モデルを実現し、新たに2シリーズ製作することが可能になりました。  

色合いと形状がどちらも重要な、希少な病態についても、モデルの作成が可能となりました。これにより、宗教上の理由で解剖用の人体の使用が禁じられている場合、あるいは疾患の希少性の高い病態を確認するための実物の人体の供給が不充分な場合、解剖学教育の機会が大きく広がりました。
ベッドサイズが大きくなったことで、従来は11分割されたパーツを接着して構築していたモデルでも、接着の容易な2分割パーツとして出力できるようになりました。すると、大部分の接合線が消えた3Dモデルでは、触感と強度がさらに向上しました。

また、精密な3Dプリント技術と丈夫な素材を活かし、中空パーツでは肉厚を3mmまで薄く設計することが可能になりました。このパーツは、取り扱いに十分な強度を保ち、持ち運びやすい軽さながら、適度な手触りと・重量感も有しています。
今日では3Dイノベーション・デザインスタジオ・チームは多くの学術機関、臨床グループ、商業パートナーの協力の下、3Dキャプチャ技術で生成された作品を3D出力しています。


大学内外へのインパクト


教育・学習目的にMimaki 3DUJ-553で出力した解剖学用に色再現された人体模型

教育・学習目的にMimaki 3DUJ-553で出力した解剖学用に色再現された人体模型


人体解剖学教育センター、3Dイノベーション・デザインスタジオのディレクターであるJustin W Adams准教授は、次のように説明しています:
「私たちは学内での研究だけでなく、学外では商業的パートナーとも連携していますから、コストに留意しながら、そちらのユーザーに提供できる価値を意識する必要もあるのです。そのため、3Dプリンタの投資対効果については、純粋な学内の研究事業よりも厳しい基準で計算しています。それでも3DUJ-553の品質性能、それにベッドサイズと信頼性を考え合わせれば、我々の求める条件を満たしてくれています。」

モナシュ大学テクニカルオフィサー、Michelle Quayle氏は次のように説明しています:
「学内でも3DUJ-553のおかげで、関心が高まっているんです。例えば、考古学科からギリシャ時代の器をフルカラーで出力したい、古生物学の方からも、化石の表面をフルカラー3Dスキャンしたものを複製してほしいという要望がありました。フルカラー3D出力に特に用のない分野、例えば工学分野では、フルカラー出力が必要ではなくても、単色での3Dプリントモデルとして活用されています。」

Adams准教授はさらに説明を続けました:
「外科分野でのトレーニングや手術シミュレーションでも、Mimakiテクノロジーの用途は今後更に拡大していくと考えています。外科医は、手術の中でも特に稀な手術や複雑な手法を習得すると、実際の手術で自分の習得した技術を、常に保つことができるように練習も必要です。一方で、次世代の外科医は適切なトレーニングを重ねて新たにスキルを習得し、現役の外科医の後を引き継いでゆくために、臨床実習を重ねていく必要があります。そこで問題となることが実習環境を十分に用意できないという危機的な状況です。オーストラリアでは、一人の外科医養成に給料ではなく、養成にかかる費用だけで100万ドルかかります。そのため、高精度な3D出力モデルを駆使した外科トレーニングでは、症例数、特定病態によるアクセス機会に制約されることなく、学習を満足に進められることができるのです。」


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