UVプリンタ「UCJV330-160」を導入し新たな領域に挑戦 未知の可能性あるマシン:佐川印刷株式会社様

課題
改善
多様なソフトメディアで高付加価値の製品を生み出したい。環境に配慮しつつ作業の省力化と自動化を推進。また、輸送コストを下げ、輸送時のインク割れや脱落なども防ぎたい。
ラテックスではできないロールメディアへのUV印刷で2.5Dなど高い付加価値製品を制作可能に。ロールなので出力時はかけっぱなしで自動生産可能。折り曲げなどに強い柔軟なインクで、割れや脱落の発生はない。

導入した製品

UVプリンタ「UCJV330-160」を導入し新たな領域に挑戦 未知の可能性あるマシン

デジタルプリントの工房

佐川印刷(株)の「Sakawa Digital Printing Studio Yoshida(佐川デジタルプリンティングスタジオ吉田)」は2021年12月オープン、愛媛県宇和島市吉田町の オフセット印刷工場(吉田工場)を5年かけてリノベーションした。


リノベーションで完成した「佐川デジタルプリンティングスタジオ吉田」

リノベーションで完成した「佐川デジタルプリンティングスタジオ吉田」


このスタジオは、屋外サイン用の大判プリンタや昇華転写プリンタ、ガーメントプリンタなどのデジタルプリント機器と加工機を多数設置・稼働させているデジタル印刷専門工房。

佐川印刷は1947年にこの地域で創業し、2001年に大型オフセット印刷工場を、2002年には本社を松山に移転し吉田工場は事務印刷を行っていたが、時代の流れから仕事量は少しずつ減っていた。本社工場との統合も視野に入れていたが、宇和島地域に根ざして生活している社員も多く、なくしてしまえば地域経済にも影響がある。このことからデジタル印刷専門の工場に転換した。

佐川正純(さかわまさずみ)社長は「ただ生産するだけでなく、そこで実験や研究開発をしながら新しい付加価値の高い製品を生み出したい。そんな思いから『スタジオ』 と名付けた」と語る。


佐川正純社長

佐川正純社長


UVインクジェットプリンタ「UCJV330-160」を導入


(株)ミマキエンジニアリングの「UCJV330-160」が導入されたのは2024年4月。「UCJV330」シリーズは、同社が前年発表したサイングラフィック向けUV硬化型プリンタのフラグシップモデル。UVプリントは、出力物の素材を選ばず、サイン用の塩ビメディアはもちろん、PETやポリウレタン、布、非コートの紙など、幅広い基材のプリントに対応する。また、UV-LED方式のため高温にならず、熱に弱いメディアでもプリント可能。インクは基本のCMYKに加え、白インクとクリアインクを標準搭載。乳白(半透明)や透明、下地色付きのシートにもさまざまな表現でプリントできる。

さらにインクを重ねて出力することでエンボスや凹凸表現を施した「2.5Dプリント」や、表裏に異なるデザインを施す「5層プリント」といった特殊なプリントも可能だ。

カッティングプロッター機能も付属しており、プリント後にカット加工が1台でできる。UVインクは出力後、すぐに硬化するため、カットやラミネートなどの後加工への待ち時間がないことも特長。

佐川社長は、これらの機能を活かした出力物の開発を試みている。


2024年に導入された「UCJV330-160」

2024年に導入された「UCJV330-160」


印刷会社だからできる!


佐川印刷は、主業とする印刷技術のベースがある。2020年には国際的なプリンティングイベントで行われた「FESPAアワード2020」で、「クリエイティブ特殊印刷加工部門」「一般投票部門」の2冠に輝いた。受賞した作品は、愛媛近海で獲れる魚を本物そっくりに印刷した「Japanese Fishes Calender(日本の魚カレンダー2020年スペシャル版)」で、一般投票部門では投票数1位での受賞だった。

このカレンダーは、愛媛の水産業を応援するために年4回発行しているフリーマガジン「Eのさかな」の集大成として、掲載写真等を活用して作成したものだ。UVインク技術を活用し、立体感のあるレリーフのような2.5D厚盛プリントに仕上げることで、実物に近い質感や色味やテカリなど “観て、触って、楽しめる” 印刷となっている。


「FESPAアワード2020」で、「クリエイティブ特殊印刷加工部門」「一般投票部門」の2冠に輝いた「Japanese Fishes Calender」

「FESPAアワード2020」で、「クリエイティブ特殊印刷加工部門」「一般投票部門」の2冠に輝いた「Japanese Fishes Calender」


佐川社長は「愛媛、とくに私の生まれた宇和島地方は、第一次産業の町。海ではタイやブリなどがたくさん獲れ、日本でも有数の水揚げ高です。こういったものを応援したいという気持ちがあり、このような印刷物をつくりました」と話す。

「UCJV330-160」1号機の導入もこのような印刷技術とデジタルプリンティングを組み合わせた製作物を探求することが目的という。

すでに驚くべき制作事例が完成している。このプリンタでの出力物と箔を組み合わせた「宇和島地方のPRポスターサンプル」は、「愛媛 宇和島」部分が金色に光る輝度の高い箔での表現となっている。このプリンタには、金色のインクはなく、後加工によるプリントだが「こういった特殊な加工をできるのも、このプリンタが速乾性のあるUVインクを搭載しているからです」と佐川社長。

このプリンタの機能のみを使ったサンプルとしては、同社創業の地である吉田町の名物であるみかんを、その皮や実の凹凸までをクリアインクで再現した印刷物がある。フレッシュな果物のみずみずしい手触りをプリンタで表現するという試みがユニークだ。


みかんの凹凸を感じられるプリントを実現

みかんの凹凸を感じられるプリントを実現


チャレンジできるプリンタ


佐川社長は「『UCJV330-160』はUVでロールタイプというチャレンジングなプリンタなので、それだけに使いこなすのには知恵が必要です。しかし、吉田のスタジオには多数の制作実績があり、使いこなせるし、使ってみたいと思って導入しました」と振り返る。

これまでも同社では、フラットベッドタイプのUV硬化型プリンタを活用してきたが、出力するのはボードや段ボールなどの硬くて厚みのある素材がほとんどだった。UVインクは素材を選ばずプリントできる良さがある一方、硬化後は折り曲げに弱く、割れやすいといった弱点があった。

「UCJV330」シリーズでは、これらの課題を克服した柔軟なインクが用意されている。これにより、プリント後にロール状にして輸送できるので配送費を低減、施工時も曲面への貼り付けも可能だ。

さらには出力時もロールタイプであるため、メディアを載せ換える手間がなく、連続して出力することで、プリントの省力化・自動化に貢献している。


UVインクで被着体を選ばず、ロールでのプリントのため曲面での使用が可能

UVインクで被着体を選ばず、ロールでのプリントのため曲面での使用が可能


佐川印刷の「Sakawa Digital Printing Studio」は工場であると同時に研究・開発の場でもあり、「一般の印刷よりも付加価値が高いものを作成するという使命がある」という。

レッドオーシャンの下請け仕事をやめることが、スタジオ設立の目標の一つ。印刷業界は付加価値の高いものでなければ利益が取れない時代。「紙だけではなく、なんにでも印刷してやろう」という意気込みで製品を生み出し続けている。その結果、比較的新規の事業にもかかわらず、同社売上の2~3割まで成長した。

佐川社長は「アンゾフの成長マトリクス」を引用し「『既存商品を新しいマーケットへ投入』を行ってきました 」と話す。今年4月にも「インターペット2024」というペット市場の展示会に出展し、「はこころこ」のブランドでプリンタを活用したペットのオリジナルグッズ作成サービスをPRした。


「アンゾフの成長マトリクス」(中小企業庁サイトより引用 )

「アンゾフの成長マトリクス」(中小企業庁サイトより引用 )


さらに今回の「UCJV330-160」の導入により、さまざまなロールメディアへの高付加価値プリントが可能になったことから、同社では成長マトリクスの「新たな商品を新しいマーケットへ投入」という取り組みも見えてきた。

佐川社長は「印刷業界が印刷の展示会に出ても意味がないんです。新たなマーケットへ新しい商品を投入して販売していくことが大事。『UCJV330-160』は 未知な魅力が多く、新事業創出の大きな武器になると思っています。ユーザーにとっても選択肢が広がるのは本当にいいこと。多くの会社がこのプリンタで挑戦し、新しい印刷の市場を作っていければ素晴らしいなと思っています」と期待を寄せる。

UCJV330の魅力が詰まった佐川印刷様の専用サイトはこちら


企業・団体プロフィール

  • 名称佐川印刷株式会社
  • 業種商業印刷、屋外広告、テキスタイルプリントなど
  • 住所愛媛県松山市問屋町6番21号
  • 電話番号089‐925-7471
  • URLhttps://www.sakawa.co.jp/

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