デジタル機でフィルム製品からラベルまで~ワンストップサービスを提供する総合印刷会社:松本印刷株式会社様

課題
改善
ラベル印刷の内製化や通販事業の推進等、時代の変遷に伴う需要の変化を見極め、提案型企業として地域活性化に貢献したい。
小型から大型まで全12台のミマキ製IJPとカッティングプロッタで、ラベルはもちろん、サインからオリジナルグッズまで様々な製品を製造。今後は小型IJPの台数をさらに増やし機動力を増強したい。

導入した製品

JFX200-2513CG-60SRIIIを導入いただいている松本印刷株式会社様の活用事例が、日本国内唯一のラベル関連専門紙『ラベル新聞』 (令和3年9月1日第1251号)の"Business now"に掲載されました。

以下に掲載された記事を原文のままご紹介いたします。

記事原文のPDFはこちら




松本印刷(株)(静岡県榛原郡吉田町片岡、松本憲治社長、電話0548-32-0850)は、1932年に製袋業で創業。その後、印刷分野に事業を拡大し、61年に現社名で設立した。オフセット枚葉・輪転機のほか、設立期から帳票印刷も手がけ可変データの扱いも得意にする。また、プリプレスおよび印刷のデジタル化も印刷業界早期から推進。その一貫としてインクジェットプリンタ(IJP)とデジタル印刷機でラベルの内製化も果たしている。創業89年の老舗総合印刷会社が考える印刷業の将来をリポートした。 (鈴木)


ワンストップサービスを提供する総合印刷会社


松本憲治社長

松本憲治社長

同社は、直接取引8割、県内売り上げが全体の8割という地元密着型企業で、県内産業をサポートする総合印刷会社として社員180人で展開。現在、営業部門は静岡県内に4拠点、東京に1拠点の計5拠点を置いているほか、製造部門は吉田町の川尻工場に集約され、社員半数以上の118人が従事している。

本社近隣にある川尻工場は、事業拡大により本社工場が手狭になった関係で、90年に第1期工事を完成させ設立。オフセット輪転機のほか、プリプレス部門、帳票輪転印刷部門の稼働を開始した。94年第2期工事では、すべての印刷部門を本社から川尻工場に移設し、生産工程を一元化している。

印刷業界においては早期からデジタル化にも着手。93年には第1段階として、すべてのプリプレスを社内ネットワークにのせる独自のデジタルプリプレス環境を構築した。99年には第2段階として、印刷のデジタル化を実現。インディゴ(当時)「E-Print 1000」などを導入し、いち早く時代のニーズに対応する形でインターネット受注も開始している。

その後川尻工場は、受注増加に伴い2002年に第3期工事を完成させ新生産システムを確立。デジタル印刷環境の充実を図るべく、電子写真方式やUVIJなどシートタイプの各種デジタル印刷機のほか、デジタルラベル印刷機、UVIJP、さらには大型カッティングプロッタ、レーザーダイカット機など印刷用途に応じた印刷機と後加工機を増設している。一方、従来のコンベンショナル機については、現需要と将来性をシビアに見極め、早い段階での機種入れ替えを実施。これらの変革により、印刷分野の区分けは、帳票、商業印刷、封筒などの「オフセット印刷」、2013年から一部内製化を開始した「ラベル印刷」、各種小ロット印刷物の「オンデマンド印刷」といった3本柱での展開となっている。なお、14年にオープンしたプリントショップ「一作屋」は、『一つからオリジナル品』をコンセプトに、印刷物の相談ができる通販サイト。ミマキエンジニアリング(以下、ミマキ)製UVIJPを中心に小ロット製品を提供している。さらには、最終形態が印刷物ではないデジタルソリューションとして、企業や店舗、団体、病院など各業種のウェブサイトおよび動画、デジタルブックの制作も展開している。

製袋業で起業したのち、商業印刷、帳票、デジタル印刷など、時代の変遷を見極め事業を拡大してきた同社。「典型的な受注型企業で長らくやってきたが、機械も人材もそろっているため、印刷だけでなくイベント立案から丸ごと請け負う提案型企業として、地域活性化に役立つ展開をしていきたい」と松本社長は話す。「顧客のためになれること、顧客のアイデアを形にすることを推進していかなければ」と、地域密着型で何でも頼めるワンストップサービスを提供する会社を目指し、まい進している。


潮流に最適化した事業へ随時刷新


前向きな設備刷新


鈴木章公取締役・川尻工場長と石川雅彦ECプロジェクト部長

鈴木章公取締役・川尻工場長と石川雅彦ECプロジェクト部長

「時代の変遷とともに、ちらしの需要が減少してきたあたりが当社の過渡期で、設備体制見直しの時期でもあった」と話す鈴木章公工場長。これに限らず、創業89年の中で、印刷機の経過年数を見ながら、何度かの大きな設備刷新や廃止に伴う業務転換を英断してきた。

まず、需要が激減したちらしやパンフレットについては、デジタル印刷機を導入することで、約1万枚までの小ロットであれば受注翌日に納品できる超短納期を実現。「社内一貫生産の体制を整えているからこそ可能にできたことだが、多くの社員を抱えているため、件数を集める厳しい側面もある」(鈴木工場長)という。しかし、地域に古くから根付いた営業活動で約3000社の顧客を抱えていることから、コロナ禍であっても受注減は最小限に抑えられているそうだ。鈴木工場長は「小ロット印刷物にも積極対応。しかも極力デジタル機で」と 話す。




最新設備の菊全両面オフセット枚葉機。一般印刷物はMUDで経産大臣賞も受賞

最新設備の菊全両面オフセット枚葉機。一般印刷物はMUDで経産大臣賞も受賞

一方、コンベンショナル機では、16年前に新たなチャレンジを推進した。商業印刷でクリア印刷や擬似エンボスなど、従来にはない付加価値のある高級印刷物を製造したいと、ハイデルベルグの菊全UVオフセット10色機を国内で初めて導入。しかし、これまでさまざまな印刷物に挑戦してきたが、市場で固定化されたニーズ『品質よりも価格』の壁は高く、費用対効果を生み出すには厳しい状況が続いているという。

そして、設立期から手がけてきたフォーム印刷からの転換。『フォームの松本印刷』と言われるほど地域に企業名を浸透させてきた同社だが、パソコンとインターネットの普及で伝票需要が激減。そこで、まったく新しい製造部門として、ラベル印刷への挑戦に踏み切ることとなった。


デジタル機でフィルム製品からラベルまで


ラベル印刷の内製化

従来同社は、シール・ラベルの営業はしていたものの、近隣のラベル印刷会社に100%外注している状況だった。しかし、年々受注が減少するフォーム印刷に変わる印刷物を模索した結果、ラベルの一部内製化を図るに至った。

ECプロジェクト部の石川雅彦部長によると、13年に、ミマキ製IJPを導入。小ロットのラベルを手がけるには同機とのマッチングが非常によく、カッティングプロッタも同時に設備し、小学校入学時に学校で注文される「お名前シール」や、コンシューマー向けラベルアプリを介して受注されるシール・ラベルなどを製造している。

16年には、さらに内製化率を上げるために、エプソンの「SurePress L-4033AW」を導入。抜き加工には、ミマキのカッティングプロッタに加え、近隣メーカーのレーザーダイカット機(当時シノハラ・ジャパン)を導入し、印刷から抜き加工のすべてをデジタルで製造している。


デジタル印刷後のラベル抜き加工は、ミマキ製カッティングプロッタ(上)とレーザーダイカット機(光文堂)で行う

デジタル印刷後のラベル抜き加工は、ミマキ製カッティングプロッタ(上)とレーザーダイカット機(光文堂)で行う


デジタルラベル印刷機を導入し、ラベルの内製化率を向上(上)。顧客のあらゆるニーズに対応しているラベル製品群

デジタルラベル印刷機を導入し、ラベルの内製化率を向上(上)。顧客のあらゆるニーズに対応しているラベル製品群


ラベル製造初心者の総合印刷企業がどのようにして順調にラベル内製化を実現したのか。同社では、ラベル受注のすべてを製造するのではなく、自社のデジタル設備で製造できるものとできないものを仕分けし、3割程度を内製化している。近隣は、しらすやうなぎ、お茶などの全国的名産地で、農水産品が豊富にあるため、「小ロットのラベルが、デジタル機に見事にマッチングしている」と石川部長は話す。一方、フォームからラベルに舵を切った鈴木工場長は、「急下降していた印刷量が、ラベルに着手することで右肩上がりになっていったので、まずは、『よかった』しかない」と顔をほころばす。

SurePressの運用については、ラベル印刷会社で勉強したのち、「自社のカラープロファイルに、カラーマネジメントを合わせていく作業を地道に行った」(石川部長)そうだ。一方、IJPに関しては現在、ミマキのIJP7台、カッティングプロッタ5台を設置。ラベルだけでなく、サインやパーティション、店舗ディスプレー、什器から通販製品まであらゆる製品を製造している。

石川部長によると、同社には非常に優秀なオペレーターが在籍し、メーカー頼みではなく、独自のインクドロップコントロールを厳密に行い、他社にはない高品質な印刷物に仕上げているのが強みなのだそうだ。そのため、デジタル印刷物であっても、ルーペを見ながらオフセット枚葉と同レベルの厳しい品質管理を推進。遠くから見るサイン印刷物も「近くで見ても色と品質がよいのが売り」(石川部長)という。今後の展望については、「投資額や作業性の観点から、大型のデジタルラベル印刷機よりも、小型IJPの台数をさらに増やし機動力を増強したい」(石川部長)と意欲を見せる。


小型から大型まで全12台のミマキ製IJPとカッティングプロッタで、さまざまなデジタル印刷に対応している

小型から大型まで全12台のミマキ製IJPとカッティングプロッタで、さまざまなデジタル印刷に対応している


ミマキのIJPで製造する広島東洋カープの「カープベースボールギャラリー」オリジナルグッズ製品群(左)と、同機の2.5Dプリント技術を利用してリアルな画像表現に成功した印刷物

ミマキのIJPで製造する広島東洋カープの「カープベースボールギャラリー」オリジナルグッズ製品群(左)と、同機の2.5Dプリント技術を利用してリアルな画像表現に成功した印刷物


あらゆるニーズを形に


「何でもできる企業でなければ」と鈴木工場長は語る。各種機器の品質も向上し、どの印刷会社でもほぼ同じものが製造できるようになった現代では、どのように付加価値をつけていくかが企業存続の分かれ道となるからだ。「時代が変わると総合印刷の括りも変わってくる。基軸は印刷に置きながらも、何を新たに取り組んでいくかが重要」と話す。実際、デジタルラベル印刷機の導入は、2年間オープンにしていなかったそうだが、「社内情報をクローズにしていては成長できない。共存していくためには、顧客とも情報を分かち合わねば。新しい事業部門を作っていくのが私の仕事で、シール・ラベルもその一つ」と鈴木工場長は振り返る。

一方、松本社長は、コロナ禍でイベントも激減し売り上げが減少している中、どう企業の活路を見出していくかがすべてと話す。「自分たちで創り、自分たちで売る。その売り先は、企業はもちろん一般消費者も。今までの総合印刷業がターゲットにしていなかった領域にも攻めていかないと」。その取り組みの一環として、同社の印刷通販サイトは、12月にリニューアルオープンする。見せ方をがらりと変え、企業と一般消費者双方の顧客目線サイトにしていくという。

印刷に縛られるのではなく、顧客のためになる仕事を発掘する中から印刷につなげていこうとしている松本印刷。「売れるものは時代の変遷とともにどんどん変わる。顧客からいただいたアイデアから自分たちで仕事を創り、ニーズを形にする。それこそが重要」と松本社長は話すが、もう一つの歩む道として、アナログの良さをどう残していくかという課題も挙げる。「スピードと柔軟性からデジタルに行きがちな現代の生産工程だが、だからこそオフセットオペレーターにしかできない残していくべき技術と道を見いだし、付加価値につなげたい」。そう、もう一つの将来も見据えている。

出典:第1251号 令和3年9月1日 ラベル新聞 【昭和44年9月30日第三種郵便物認可】


企業・団体プロフィール

  • 名称松本印刷株式会社
  • 業種印刷関連全般(企画~配送まで)、ホームページ・AR・動画・CD-ROM企画制作、販売促進商品販売、広告宣伝業務、OA機器・ソフトウェア販売、ECサイト運営
  • 住所静岡県榛原郡吉田町片岡2210
  • 電話番号0548-32-0850
  • URLhttp://www.m-print.co.jp/

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